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『ほどほどに食っていける田舎暮らし術』
徳島在住の脱サラ就農者が自らの20年に及ぶ自給自足的生活のありようを凝縮

 著者は50歳から脱サラして千葉県内で居所を変え、最終的に徳島に定着して自給自足的生活を営んできた就農者にしてライターだ。書名『…田舎暮らし術』を見たとき、いかにも実用的・実践的な技術をまとめた本を出すこの出版社らしいタイトルだと思った。反面、この著者はこの類の本をすでに数冊著しており、「何を今さら…」という気がしたのも、また実直なところだ。

 しかして、読み進めていくうちに、やはりこの本は自給自足的生活のノウハウをまとめた本ではなかった。体当たりの就農、自給自足的生活の軌跡に加えて、地域の人々との交流のエピソードなども交えながら、いかに現住の地で生業を立て、生活してきたかをまとめた本だ。

 さらに、その実際の生活のありようを形づくる著者の考え方、生き方にまで踏み込んだ内容となっている。つまり、単なる「術」を紹介した本ではないという点が、実にうれしい書名と内容の“ミスマッチ”であった。このような内容の本が、この出版社から刊行されたのは意外に思えた。

 その内容の主たるメッセージは、金銭の有無や居所の都鄙(都会と田舎)が人生の豊かさを規定づけるのではなく、その人間の考え方、生き方が真の豊かな生活をもたらすということだと読み取った。考えてみれば、昔の農家などは、「貨幣経済」の部分は衣食住の生計を立てる一部分だったように思う。生計の大部分が貨幣を使った消費に依存している都会の生活、というよりも一般的な現代人の生活とは一線を画する生き方が、「ほどほどに食っていける」ことを可能にしていると言えるだろう。

 本書は6章立てだ。第1章では、就農前後の試行錯誤の段階で、生産物に生産者・生産場所・生産過程の情報という付加価値を付けるアグリビジネスを展開した話題。第2章は、米・大豆・麦などの穀類生産に着手し、その加工品まで製造し始めた段階。醸造・養鶏にまで話題が及ぶ。第3章は、いわゆる害虫・害獣、また捕獲する喜びをもたらしてくれる昆虫・魚などの話題。食するとは「命をいただくこと」という重みを改めて感じさせられる。

 後半は、農業色がちょっと薄まって生活全般への広がりのある内容だ。る第4章は、体験農業で自宅に受入れた人、近隣の住人、ちょっと足を伸ばして参加した会合で出会った人など、人との交流にまつわるエピソードやそこから得たことの紹介。第5章は、農耕の枠を超えた魚捕り、食品加工、薪を燃料にとりいれた暮らし、小屋の自作など、ひろく身近なものに手間を掛けて生活に活かす営みの体験談。第6章は、「小さな財布で悠々自適に」と題して、さらにさまざまな体験談を盛り込みながら、この本の主題となる自らの生活に対する考え方のありようがまとめられている。

 自らはかく考え、こうしてやってきたということが、様々な体験とともにさらりとまとめられており、「生き方」について綴った本の割には、微塵の理屈っぽさも、妙な独善性も感じさせない。読みやすくて、新しい知見が得られ、すんなりと共感できる内容の多いおすすめの1冊だ。

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『過疎地で快適に暮らす。』
「過疎地暮らし」という概念を提示し、その経験に基づき私見をつづる

 著者は札幌の私大の哲学・倫理学の教授で作家・評論家。「田舎」と異なる「過疎地」という概念を設定し、「過疎地暮らし」の経験を紹介して、その実践をすすめ、さまざまなアドバイスを書いている。

 「過疎地」とは、かつては人間の生活・生業があったが、その後捨てられて無人となった場所のことだという。都市から100〜200kmほどの距離の高台に1,000坪くらいの土地を得て、車を移動手段にPCや携帯電話を通信手段にして、都市でも、自宅でも働くというスタイルが理想らしい。

 「田舎暮らしのすすめ」のような解説本は、その分野の取材量が豊富なライターや、物件仲介実績に基づく豊富な事例をおさえている不動産業者などが書いている場合が多く、このような場合は実例に則していて説得的である。しかし、この本は、残念ながら、「すすめ」られても鵜呑みにしていいものか、不安な部分が少なからずあるように思う。資料収集はインターネットでかなり充足するようなことが書かれているが、極端な例では行ったこともない房総の鴨川などをあげて、その良し悪しを論ずるなど、説得力を欠く記述もある。

 また、論評もいささか主観的であり、例の鴨川で言えば、私は山派だと書いてから、観光地や海側に住むのはよくないというのでは、「海派」の読者にはついていけないと思う。南房の鴨川や館山は、沿岸と内陸それぞれに味わいがある。房総半島は、「里山」・「里海」が近接しているところに大きな特徴がある。台風などの時に波しぶきをかぶるようなところでなければ、その人の指向に合った場所に、生活に支障のないように工夫して居を構えればよいことだと思う。

 著者が生活実践例として紹介しているのは、自らが住んだ三重県の上野と北海道の長沼の2例だ。この本の中では、この2つの土地での暮らしの話題が、北海道に飛んだかと思うと、また三重に戻ったりと反復があり、必然的に部分的な重複がある。読み手にしてみれば、どことなく煩わしい。生活体験記として、時系列に沿って親の世代の話、少年期、三重時代の話、現在に至る北海道時代の話という全体構成に編集した方が、かなり読みやすい。

 その点で、この本は、「過疎地暮らし」のすすめというガイドブックとしてではなく、著者のライフスタイルや考え方、生活体験から得た教訓をつづった体験記として読むならば、大いに読む価値はあるし、参考にもなる。著者の生活観と、そこから来るライフスタイルは首尾一貫しており、「ほほう…、こういう考え方を持って、こんな場所で、こんな暮らし方をしている人がいるんだ…」というふうに、読者は興味深く読むことができるだろう。私自身は、40・50代は、次のステップに備えて、今の本業とは別の、もうひとつの仕事を身につける時期だという著者の考えに、大いに触発された。

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『馬頭のカバちゃん 田舎暮らし奮闘記』
田舎で暮らすことの大変さと充実感がストレートに伝わってくるエッセイ

 前著『会社を辞めて田舎へGO!』に続く、栃木県の馬頭町での田舎暮らしをつづった著者の第2作目にあたる田舎暮らしエッセイである。内容は、出版元の運営するポータルサイトに連載した「元プレジデント編集長の田舎暮らし奮闘記」が核となっているが、移住後の暮らしぶりが春夏秋冬の4章に分けて編集されている。

 本書を読めば、「田舎暮らし」の「静寂」・「のんびり」・「脱世俗」などのイメージとは到底結びつかない暮らしが現実に展開されている様が手にとるようにわかる。全国の過疎の町村で問題となっている産廃処分場や自治体選挙への取り組み、地域の人との密接なコミュニケーションとそこから得たもの、生業や子育ての話題など、読む者を飽きさせない小気味よいテンポで多岐にわたる話題がちりばめられている。

 中でも最も印象的なのは、中学入学を機に移住して転校し、高2になった息子のたくましい成長ぶりと環境適応性のすばらしさ、ロードバイクという共通の趣味を中心に交わされる親父と息子の心の通ったコミュニケーションである。さまざまな難題にぶつかり、それを1つずつ克服していく、決して楽ではない暮らしの中にあって、田舎に移住した著者が充実感・幸福感を味わいながら生活しているということがしっかりと伝わってくる文章であった。

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『僕たちの移住 廃屋からの家造り』
本州→小樽→上士幌町と移住、牛舎をセルフビルドで自宅に改築

 発行元の「山猫工房」は、著者夫妻が主宰する北海道の素材を用いた素材を用いた楽器・染織品・木工品などを製作している。著者夫妻は共に本州からの移住者で、小樽で「民宿ぽんぽん船」を開き、北海道の旅の情報誌『なまら蝦夷』の編集と事務局の仕事に携わってきたが、大自然に囲まれた暮らしにあこがれ、道東は十勝支庁管内の上士幌町に2度目の移住を決行する。

 この本は、その二度目の経緯にはじまり、セルフビルドで廃屋となった牛舎を改築する過程を詳細に紹介、広大な自然に抱かれたそのマイホームでの暮らしぶりなどもつづられている。

 B5版128頁の本で、巻頭の8頁にはカラー写真が掲載され、また本編はモノクロだが、豊富な写真・イラスト・図面がほぼ前ページにわたって掲載されており、本文自体も読みやすい。40年間使われていなかったマンサード屋根の牛舎に再び生命を吹き込んだということ自体、諸手を挙げて絶賛したいが、このビルダー、ただ者ではない。

 木工事は言うに及ばず、屋根に至ってはトタン板1枚から自らの手で板金加工を行い、設置した薪ストーブに及んでは、初めての鉄加工に挑んだ自作品である。

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『農家の嫁の事件簿 こちら北国、山の中』
マスコミでも取りあげられた有名人気ブログの書籍化

 この本は、田舎移住というよりも、就職で岩手県に移り、農家の長男との結婚で同県の岩泉町に暮らすことになった女性のブログが書籍化されたものである。このブログのレビューは、Webサイト上だけではなく、マスコミでもなされているので、ここに書くことのできる目新しいことは何もないが、言われているように文章もさることながら、画像が独特のタッチで味わい深く楽しめるのが特徴である。この本でも随所にカラーの挿絵が載っていて、その気になれば一気に読み切れる本である。

 同地で暮らす人、農家の人には書き留めるにも値しないあたりまえの日常なのだろうが、このブログ・本の魅力を支えているのは、文筆・画筆の表現力以前に、埼玉県出身で大学・大学院で環境科学を専攻し、岩泉町民俗資料室に勤務していた著者の経歴から来ているであろう「着眼力」・「観察力」であると思う。

 田舎や農家、嫁の「いいとこどり」で、美化し過ぎとの批判(非難?)めいた評もあるようであるが、昔と今では「農家の嫁」の立場はかなり変わってきている。今現在の田舎が都会に出た者の原風景・原体験の「田舎」ままで時間が止まっていようはずがない。私はそれを盛岡に近い(たぶん著者の住まいよりも)隣県の郷里に帰省するたびに実感させられている。

 また、田舎の農家であろうが、都会のサラリーマンであろうが、良いところと悪いところの二面性があるのは当然で、むしろ著者自身が自分の新しい生活の中で魅力や興味を感じたプラスの面を前向きに捉えて書き留め、自分で生活を一層楽しく充実したものに作り上げている姿勢に共感を覚える。この点も、このブログの「人気」や出版化を支える力となったのではなかろうか。

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『私の田舎暮らしと魚釣り マージナル・ライフの実践』
米子在住の著者が生活実践を通じて「とる文化」の復権を説く

 この本は、書名に「田舎暮らしと魚釣り」とあり、さして釣りに興味を抱かない人にしてみれば、あまり魅力的には感じられない本かも知れない。しかし、内容は単なる釣り三昧の田舎暮らし体験記の域にとどまらない広がりと深みを持っている。

 本書は全273ページに及ぶハードカバーの本であり、その内容は、全10章立てである。1.マージナルライフと命名した自らの田舎暮らしを始めた理由、2.少年時代の原体験とその当時に釣りを教えてくれた父の「Iターン」を契機に、自らも大阪から鳥取県に「Iターン」するに至った経緯、3.移住後の休職活動や最初の移住地名和町から米子市に転居した経緯、4.田舎型の四季の海釣り、5.川釣り、6.雨や夜間をものともしない自転車での渓流釣りの魅力、7.山菜採りの実践と山菜の紹介、8.衰退しつつある「とる文化」の復権の主張、9.自然のリズムや維持管理・修繕の評価を再認識した消費生活の見直し。

 要するに、この本は、現在は衰退しつつある、「里」の周縁部で営まれてきた狩猟・採集・漁撈などの「獲得経済」を中心に据えた生活実践を紹介している。著者はさまざまな次元において「周縁的」なものの持つ伝統的価値を見直した生活を「マージナル・ライフ」として実践している。

 本書で著者の言うところの「とる文化」、すなわち「獲得経済」は、そもそも人類史の中で農耕・牧畜に始まる「生産経済」に先立つ最も原初的なものである。それが周縁的地位に追いやられ、その技法の伝承すら危うい現代の社会であるが、現代の私たちは「獲得経済」の営みが人類社会の「基層文化」であることを忘れてはなるまい。

 万事につけて「ベース」の部分に「華」がないのは世の常とはいえ、自然と人間の直接の接点をなしてきた営みがもし完全に忘れ去られたとしたら、「繁栄」を謳歌している人間社会の存続は危うくなるのではあるまいか。著者の主張や実践は、いま田舎で暮らしているかどうかに関わりなく、「田舎育ち」の人で、同じような原体験を持つ人からは、かなりの共感を得られるように思う。

 なお、本書は学術書のようなスタイルで、巻末に注釈が一括してまとめられているが、引用の出典の注釈はともかく、用語解説の注釈については、逐一ページをめくり返すのが煩わしかった。脚注・割注の形式でページ内におさめてもらえると、読者としてはありがたい。

 「釣り」にさほど興味のない人にも、一読をすすめたい田舎暮らしの実践書である。

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『素朴だけでない 田舎暮らしの馴染み方』
信州のリゾート地をフィールドに「田舎」の実像とその変遷を多面的に描写

 著者は、東京生まれで、1963年以来信州と関わってきた経歴を持つ山荘経営者であり、あわせて地域イベント等のプランニング、地域社会の研究、執筆・講演活動などを行ってきた。ひろく日本社会全体や地域社会に関心を寄せてきた視点と、リゾート地の「田舎」で生業を営み、生活してきた視点を併せ持った者のみがなしえる分析と描写が、本書の真骨頂と言える。

 本書では、揺らぐ「時速4キロの文化」と台頭する「時速50キロの文化」をキーワードに、1960年代以降の信州のリゾート地の産業や文化、情報などの実像と変遷を克明にたどり、その「田舎」に対する都会人の認識・関心・関係などの変遷も巧みに描き出している。実地に見たフランスの山岳リゾートとの対比も効果的である。

 田舎での生活経験がある者には自明のことだか、この本を読むと、田舎には田舎の経済・政治の営みが脈々と続いているとともに、その営みの変遷が決して日本社会の大きなうねりから隔離されたものではないことがありありとわかる。学生村、スキーブーム、モータリゼーション、情報化社会の到来、長野オリンピックなどが、信州の「田舎」にどのような作用をもたらしたのかが鮮明に浮かび上がる。

 なお、第6章「田舎ブームを考える」は、現今の田舎現状を踏まえた、田舎移住に関心がある人へのメッセージである。しかし、この本はタイトル通りに、「田舎暮らしの馴染み方」の具体的な方策を解説した本ではない。余談であるが、評者から見れば、『素朴だけでない 田舎と田舎暮らしの実像』といった類のタイトルが内容に照らしてふさわしいように思う。だが、田舎暮らしにあこがれる団塊世代のリタイア組にひろく売り込むには、いかにも売れなさそうな書名だ。

 それはともかく、リタイヤ世代のみならず、田舎移住、とりわけ田舎起業を考えている、特に子育て世代の人には、ぜひ一読をすすめたい。


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『田舎暮らしの徒然草』
IT起業の創業社長が退任後に移住先の湯河原で執筆したエッセイ集

 著者は、東証二部上場のIT企業「アグレックス」の創業者で、社長退任後に湯河原に移住し、ビジネス書や趣味に関する本を多く執筆している。この本は、著者のHPに掲載した文章や新聞の読者欄への投稿、雑誌に執筆した文章などをまとめたエッセイ集で、全部で70タイトルほどある。

 その内容は、湯河原の自然の中で触れる動植物の季節ごとの移ろいや農業・食生活など、田舎での暮らしや自然に関するエッセイも含まれているが、ビジネスや政治・戦争と平和の問題・禁煙と嫌煙など多様なテーマに及んでいる。湯河原を舞台にした田舎暮らしについての「徒然草」ではなく、田舎暮らしをしながら執筆した「徒然草」といった感じである。このように曖昧な書名なので、田舎暮らしに関するエッセイがたっぷり詰まった本だと思って買うと、がっかりすることだろう。


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『田舎暮らしはつらかった。』
東京から高知へのUターンで受けたカルチャー・ショックを活写

 飼犬との住まいを探して東京を離れ、高知の実家の離れで田舎暮らしを始めた女性ライターのエッセイ。Uターン後も、SOHOスタイルで仕事を続けている。

 田舎ならではの職業に従事しない移住者にとっては、得たものよりも、都会を離れて捨てたものの重みの方が強く感じられるようだ。一歩外に出れば仕事でも、生活でも必要なものや情報が何でもすぐ揃う便利さは、田舎移住を考える多くの人の後ろ髪を引いていることだろう。その上、いざ移住すれば、未体験のさまざまな事件が起こるのだ。

 それでも、著者は移住した不安や後悔が怒濤のように押し寄せてくる段階を乗り超えてから執筆しているので、「山」の険しさを描写しながらも、ゆとりが感じられる。また、文の流れも軽快で読み易い。

 身の回りで起こったサプライズがこれでもかとばかりに綴られているが、中でも「都会人、田舎で激太り」の節は、著者が何はさておき一番の大問題と認識していたことのようで、心の叫びがストレートに伝わってくる渾身の描写となっている。


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『田舎暮らし落第しちゃいました』
マンションを手放し古民家暮らし、のはずが1年半で出戻りに・・・

 長崎の「超田舎」育ちの主婦(パートタイマー)の田舎暮らし顛末記。小4の長女、小3の長男、小1の次女の3児の母で、夫は深夜出勤で午後帰宅のトラックドライバー。夫婦で「田舎暮らし」・「大家族奮闘記」などの番組が好きだが、ある日突然に夫が引っ越そうと言い出し、夫の勢いに乗って3週間弱で引越を敢行。福岡県久留米市の中心部にある購入7年目のマンションを出て、佐賀県鳥栖市のはずれの古民家で田舎暮らしを始める。

 マンションのローンと古民家の家賃をともに支払い、新生活のためのさまざまな買い物をして始めたその田舎暮らしだが、1年半後には買い手がまだつかないでいたリフォーム済みの元のマンションに逆戻り。著者の1年半の悪戦苦闘とその幕引きの顛末を綴った体験記である。結末のわりには、漆黒の闇のような暗さはなく、どことなく薄日が射しているような印象を受けるのは、再起の余地がある若い夫婦のせいだろう。

 全63ページの薄い本で、飾らない口語体で綴られているので一気に読める(装丁をもう少し控えめにして、もっと低価格で出版して欲しいくらいである)。1年半の悪戦苦闘の内容や挫折の引き金、さまざまな要因などをここでひとつひとつあぶり出すような野暮なことはしない。田舎暮らしにある程度の勇気は必要とはいえ、思い立ったが吉日とばかりに即行動に走る傾向のある人が、田舎暮らしを思い立ったら一読をおすすめしたい本だ。

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『旅のつづきは田舎暮らし』
福島での定年田舎暮らしと地域の現状、環境保全への取り組みなどを綴る

 著者は元朝日新聞記者で、「転勤族」だった現役時代を経て、退職後は、田舎暮らしの取材で訪ねて気に入った福島県の田島町に居を構えた。「旅のつづき」とは、退職後の人生のことだ。

 初めて稲作・畑作に挑んだ顛末、どっさり降る雪とのつきあい、地域社会の介護・医療などの現状、地域行事の楽しみやその意義などが、とても読みやすい文で綴られている。また、この本は、単に田舎の自然環境を讃美し、そこに住む自分の幸福なライフスタイルを紹介することだけにはとどまらない。自ら気に入った田舎の自然環境が行政当局や業者などの公共事業や乱開発で無惨にも破壊されていることに警鐘を鳴らし、また真にふるさとの自然環境を保全し、活用しようと活動している人々の努力と協力の成果を紹介している。

 田舎暮らしをしている著者本人も同じ立場に立ち、自ら健筆をふるうことで、環境保全に貢献している。あこがれの田舎暮らしに「もれなく付いてくる」ものと思われがちなすばらしい自然環境も、住人による保全の努力あってこそだということを強く思い知らされた。

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『朝霧高原〜風と暮らす』
富士山麓(静岡)でのログハウスづくりや農業がくれた生きる喜び

 国際ラリースト・エッセイストでテレビ・ラジオ出演や公演等で幅広く活動している著者が、産経新聞に連載した記事を単行本化した本である。

 ひとつところに住まうことを、縛られたくないとして敢えて拒んできた著者が、朝霧高原の魅力にひかれ、仲間の協力を得てログハウスを建築し、引っ越したときに感じた心の安らぎ、また新規就農して合鴨を活用した無農薬の米作りに取り組む中で体験した作物・動物・大勢の仲間とのふれ合い、そして別れなど、話題は盛りだくさんである。

 本書は、10年間に及ぶこれらの活動をどのように実践してきたかという目に見える営みよりも、むしろそのスローな営みを通じて得られた心の反応や変化がストレートに綴られている点で興味深い。その点で、この本は朝霧高原暮らしの体験記というよりも、著者10年分の人生記であり、心の軌跡を綴った本である。セルフビルドや就農などへの取り組みが、人の心と人生にどのような喜びをもたらしてくれるかを味わって読みたい。

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『里山 手のりアマガエルと暮らして』
三重の古民家に引っ越した女性による里山暮らしの苦労と尽きない魅力

 病気療養のために早期退職した女性が引っ越した先は、三重県伊賀市の10年以上空き家だった築年数不詳の古民家。この本は、そこでの生活体験をつづったエッセイである。

 小さなアマガエルとの出会い、ヨモギご飯などのローフードづくり、藁灰づくりへの挑戦、満天の星に見入る夜のひとときなど、病んだ心身を癒してくれた里山暮らしの魅力を伝える話題は尽きない。

 その一方で、雑草との格闘、大風の脅威、ムカデやヘビなどとの遭遇、家の中に入ってくるさまざまな虫や、ニンジンなどを植えた菜園を荒らす猿の出没など、里山暮らしの大変さもつづられている。

 自然と共存して生活していく里山暮らし・古民家暮らしのよさとともに、その大変さもつづられたエッセイとして、一読に値するだろう。地元の人のアドバイスを得て、里山暮らしの大変さを受け容れながら、日に日にたくましさを増していく、著者の前向きな生活姿勢に注目したい。


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・北海道移住』
北海道移住者と北海道の地域特性を詳しく紹介

 「北海道移住」と言っても、札幌もその範疇に含まれているので、本書の対象は必ずしも「田舎暮らし」だけに収まりきらない。本書では、移住元・移住先の地域・生業など多岐にわたる10の事例をとり上げながら、さまざまな北海道移住のスタイルを紹介している。北海道での日常生活の特徴、特に冬場の生活などが、十分なページ数を割いて詳しく紹介されており、北海道暮らしのイメージづくりにはおすすめの一冊といえる。

 ただし、「広い北海道ゆえ、地域ごとの特色もさまざまであることはわかったが、特に関東や関西から来る人からみればどこも『寒くて雪が多い』ことに大差はないだろう。データばかりみて北海道内のどこに住むのが快適かと考えるのは、あまり意味がない。」(43頁)という一点については、承服しかねる。実際、評者も移り住む前にそう聞いたが、とんでもない話だ。

 この20年余の経験では、北海道は寒さの程度も雪の量も、冬以外の気候も、地域ごとに全く異なる。−20℃を切る寒さの中で生活してみればよくわかる。移住希望者には、引用部分より前の「気候の違い」をよく読み、事前に直接体験することをおすすめしたい。

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『会社を辞めて田舎へGO!』
脱サラして栃木に移住した父による田舎暮らし幸せ家族のエッセイ

 元『プレジデント』編集長(46歳)が年収1300万円の生活を捨て、田舎暮らしを始めたら、ただの「おじさん」になれたという田舎暮らし体験記である。セカンドハウスを建てた栃木県馬頭村に思い切って移住した体験をつづっているが、東京時代の経歴を村の中で引きずることなく、まさに「ふつうのおじさん」として誠実に村の人たちと接していることが、周囲の人に助けられながら日々充実した暮らしを送れる秘訣なように思われた。

 会社を早期退職して田舎へ移住するためのマニュアル本の体裁はとらないが、読んで参考となる記述もあるし、また楽しくもある。特に、妻と中1の息子の田舎暮らしへの適応過程が、とても楽しく感じられた。妻子に「あとはお父さん(の仕事)だけだ」といわれて立場が危ういというが、東京でのサラリーマン時代に、妻子がここまで「お父さん」の心配をしてくれたことがあっただろうか。まさに、田舎暮らし幸せ家族だ。


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『田舎暮らしは楽じゃない』
『田舎「育ち」は楽じゃない』ようです−田舎暮らしの本ではありません

 この本は、関東のある田舎で公務員夫婦の子に生まれ育った20代前半の著者が、田舎のマイナス面を紹介した前半部分と、自分の生い立ちを振り返る後半部分からなる。幼少時から世間体を気にすることを求められ、母と同じく自律神経失調症になって、都会に出たという。

 タイトルに「田舎暮らし」とあるが、内容的には当サイトで紹介すべき本ではなく、また田舎暮らし志向への有効なアンチ・テーゼにもなってはいない。本書のタイトルは「田舎育ちは楽じゃない」とでもすべきだったと思うが、田舎育ちの青少年みんなが自律神経失調症になっているわけではない。

 当サイトで本書をあえてとり上げたのは、田舎暮らし志向の人が、特にオンライン書店の画面でタイトルだけ見て、大変ながらも何とか田舎暮らしを続けている人のエッセイだと勘違いしたり、田舎暮らしで心得ておくべき耳の痛い戒めなどを書いた本だと勘違いして購入しないようにと思ったからである。本書に限らず、内容が書名から類推しづらい本というのは、いかがなものだろう。


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『虫嫌いの田舎暮らし』
徳島在住の脱サラ就農者が描く虫・鳥・動物・菌類の営みと人間との関わり

 『虫嫌いの田舎暮らし』とい書名から、はじめは虫嫌いの人の生活体験を通じた、田舎での虫の駆除法や回避法を紹介した本かと思った。しかし、虫を完全に拒絶する内容だと思ってページをめくると、書名と内容のうれしいミスマッチであることがわかった。

 この本は、脱サラ就農した著者が田畑などの虫の生態を紹介し、また人と虫との関わりをつづっている。その「関わり」とは、すべての「害虫」との単純な敵対関係ではなく、ある種は駆除し、ある種とは棲み分け、ある種とは共生する。ときには近所の人や家族も登場して、恐怖・驚き・怒り・憎しみ・悲しみ・笑いに満ちたストーリーが展開する。また、虫だけではなく、まむし・青大将・鶏・野鳥・カラス・うさぎ・猪・猿・イタチなど、爬虫類・鳥類・哺乳類、果ては、かび・発酵菌・腐敗菌などの菌類もとりあげている。

 田舎暮らしとは、生態系の側面からみると、人間も含めたそこに生きる多様な生物が、時に格闘し、時には互いに自然の恵みを分かち合いながら共生していく暮らしと言えそうだ。


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『沖縄移住計画
沖縄移住した人の事例と移住のための地域情報を紹介

 書名に「移住計画」とあるが、「計画」ではなく、沖縄で生活している移住者への取材をもとに、移住の経緯や現在の暮らしの様子の実例を多数紹介している本である。また、「本土」とは風土や文化が大きく異なる沖縄を、より深く知るためのコラムや付録も充実している。沖縄の自然や生活を映し出したページいっぱいの大きなカラー写真も豊富で、沖縄のすばらしさをいかんなくアピールしている。

 ただし、読者をひきつけようと沖縄のイメージのみをアピールした、「移住計画」という本書の主旨に照らして必要性の落ちる写真も少なくなかった。例えば、モノクロのイラストで紹介されていた「コラム4 沖縄家庭料理」のメニューこそ、カラー写真で紹介してほしかった。また、著名な出版社の本であるが、推敲・校正不足が目立つ。一読しただけで6〜7カ所はあっただろうか。

 しかし、少々の不満はあるにせよ、沖縄に住んだことのある人でなくてはわからない、生活事情・住宅事情・就業事情などの有益な情報が満載であり、「沖縄移住計画」を企てようとする方には、ぜひ一読をおすすめしたい「生活体験談集」である。


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『牟礼の里にひとめぼれ』
長野に移住して出会い、ふれあった生き物や地域の人たちがくれた感動と癒し

 生まれも育ちも東京の筆者が大学院生の息子に先立たれた後に、夫婦で長野県の牟礼村に1998年に移住し、6年目に綴ったエッセイである。

 慣れない雪道での犬との散歩、自宅に現れるタヌキ、スズメバチの襲撃と手当の顛末、ツバメの子育て、拾い猫の繁殖と死、冬眠前の熊の人里への出没、飼い犬にした迷い犬の失踪とけがを負っての帰宅など、主に生活の中で目にする生き物(命)の営み、筆者と生き物(命)とのふれあいを描く。

 また、道で行き交う見ず知らずの人と交わす挨拶の温かさ、早朝から新聞配達にいそしむ近所の子ども、リンゴ畑のお手伝い(「助っ人組合」)での「アクシデント」など、Iターン移住者である著者と地域の人たちとの交わりにも触れられている。読んでいて重苦しさはなく、軽快に読み進められるエッセイである。


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65人が語る沖縄移住』
沖縄移住した人への取材を通して沖縄での生活などを紹介

 本の冒頭に、移住者150人に対する20問あまりのアンケート結果が示されており、本編から得られる有益な情報は、すでに冒頭で出尽くしているような感がある。

 本編では、「住む」と題し、1人見開き2ページで、48人の移住者のプロフィール、移住前と移住後の生活や仕事、体験に基づくアドバイスなどが紹介されていて、これが本書の大部分を占める。本当にさまざまなケースがあると思わされる一方で、核心となる情報の量のわりにボリューム過多で、読んでいて中だるみした。

 次いで、「離れる」と題し、1人1ページずつ7人のケースが紹介されている。不本意ながら沖縄を離れざるを得なかった要因は、やはり生活費の確保にあるようだ。また、「計画する」と題して、10例紹介されているが、なぜかすでに住んでいる人も含まれている。結びは、賃金や賃貸不動産事情、年中行事やイベントなどのお役立ちデータ編である。本書は、本格的に沖縄移住を検討する手前でまず読んでみるのがよいように思えた。


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『生き方としての田舎暮らし』
自らの信条に基づいて始めた房総での田舎暮らしの苦労と喜び

 著者は東京生まれの東京育ちで、中学校長を早期退職して房総で田舎暮らしを始めた。著者の田舎暮らしの特色は、あるべき田舎暮らしの理念の確立が移住に先行している点である。「@自然とともに生きる。A自分で作る。B金儲けはしない。C日没後は早く眠る。」というのがその信条である。

 本編ではまず、田舎暮らしを始めてからの6年間、2頭の秋田犬と30羽の鶏などの生き物とともに暮らし、農作物の「自作」、古代米栽培やブナの植林などに取り組む著者の考えが述べられ、またその実際上の苦労や喜びも綴られている。

 また、表面的なきれい事では済まない今日の農山漁村の危機的な姿、田舎特有の習慣・慣行などを紹介し、移住後どのように田舎の社会と関わっていくべきかをアドバイスしている。さらに、最後には田舎暮らしをしている4人の仲間のさまざまな暮らしぶりや取り組みも紹介されている。

 田舎暮らしを決意したら読む本というよりは、田舎暮らしに踏み切るか否かを決める参考にすると良さそうな1冊である。


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『田舎暮らしなんか怖くない』
八ヶ岳エリアの魅力と近所づきあいなどの田舎暮らし体験

 大病を患うも、八ヶ岳エリアで人工透析をしながら田舎暮らしを営んでいる元コピーライターの本。内容は大きく2分され、前半では、自分が田舎暮らしを始めた経緯や現在暮らしている八ヶ岳エリアの自然環境や歴史的環境、現在の住環境などを紹介している。景観の美しさ・温泉・名水など、その魅力が綴られている。さらに、集落内での近所づきあいのあり方を、まず村や集落自体の社会構造などから説き起こしている。その上で、自らの交際のスタイルを説明しており、ともに参考になる。

 また、後半では、八ヶ岳エリアに移住して田舎暮らしを営む人々の事例が、著者の取材で紹介されている。菜園・製陶・薪づくりなどをしながら定年田舎暮らしをする人にはじまり、家具製作・能面打ち・パン屋・うどん屋・そば屋・喫茶店など、さまざまな生業で生活を営む11人の例が登場する。

 全体的に読みやすく、特に八ヶ岳エリアに興味のある人、近所づきあいで悩みや迷いのある人などは、一読するとよいだろう。


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『田舎暮らしの論理』
五島列島での自給自足的田舎暮らしと現代社会への提言

 この小難しそうなタイトルは、商売的に言えば失敗ではないか。なぜならば、この本には全編を通してそのようないかめしさはなく、興味深く軽快に読み進められる本だからである。

 第1章「私が辿り着いた場所」にあたる前半は、前半は著者の自給自足的生活の取り組みを紹介した田舎暮らしの「実践」の書である。著者は、奈良での5年間の貸農園利用の家庭菜園づくりを手始めに、和歌山の山村での5年間の生活を経て会社を辞職し、五島列島に移住した。移住後15年間で確立した営みは、自給用の菜園の切り盛りと現金収入獲得のための家畜の飼育とハム加工の二本柱からなる。有機栽培の米・野菜の生産はもちろんとして、自給のための加工にも積極的なのが特色である。加工は、大豆製品に加え、炭焼き・茶摘み・ビール造り・椿油の圧搾・アゴ干し(だし用にトビウオを加工)・果樹の利用など多種多様にわたる。

 また、離島での自給自足的生活とはいっても、著者は決して隠遁者なのではなく、世界や日本社会へのアンテナは鋭敏さをいや増しており、加えてさまざまな場で健筆をふるっている。後半は2章からなるが、第2章「田舎暮らしの論理」では、現代社会の前提となっている科学・消費・労働・進歩主義などの問題点を指摘し、自給的生活や地域循環型経済などを次世代のキーワードとして提示している。また、第3章「辺境通信」は地元新聞などに連載したコラム集であり、著者独自の視点からさまざまなモノや社会現象・生活などに関する所感を述べている。

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『中高年からの田舎暮らし』
千葉市緑区で暮らすライターによる田舎暮らし入門の文庫本

 この本は、『中高年からの田舎暮らし』(主婦と生活社,1997年)に加筆した文庫本である。フリーの編集者・ライターである著者は、1987年に千葉市緑区に移住して田舎暮らしを続けている。

 序章は、10年間の実体験を通して、田舎暮らしについて見えてきたこと、つかんだことから書きおこしてある。初めての田舎暮らしの入門書として本書を手にとった読者には、入りやすい構成と言えるだろう。

 本編の第1章は現在の田舎事情、第2章は田舎不動産の探し方、第3章は住まいづくり、第4章は多岐にわたる生活体験の紹介、第5章では田舎暮らしに興味を抱き始めた人が抱く疑問や迷いにQ&A形式で著者が回答している。

 文庫本なのでサイズも価格も手ごろであり、文も平易で読みやすい。田舎暮らしの総論的な入門書にあげられる一冊である。ただし、全体が文章だけで構成されているので、図表や写真などを見ながら読み進むスタイルが好きな読者にとっては辛いに違いない。


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『番外・百姓志願「花」 デジカメで撮った田舎暮らしの365日』
写真と文で伝える田舎暮らしの中の発見とよろこび

 この本は、出版社を辞めて千葉県八街市に「中村自然農園」を開いて就農し、その傍らで高校生に英語を教えて暮らしてきた著者がデジカメにはまり、仕事や趣味のマラソンのときに撮影してきた膨大な写真を、自ら割り付けして1冊にまとめたものである。作物の花や果実、食卓の料理、草花、樹木、虫、鶏、風景などの膨大な写真を、春夏秋冬の順に配している。枚数が膨大で各ページ内にぎっしりであり、そのくどさに思わず食傷気味になる。写真集を見る感覚でページをめくっていったら途中で挫折するだろう。

 しかし、この本はきちんと文を読みながらそのページの写真を見ていくと、楽しく読むことができ、同時にこの本の持つ良さを感じることができた。窮屈なまでにびっしり収められている写真の数は、編著者が自ら選んだ田舎暮らしの生き方に対する思いの強さのあらわれのように感じられた。

 また、文の内容は、写真の解説や関連するコメントだけではなく、田舎暮らしを始めてからの後半生の中で実践してきたことや体験してきたこと、感じたことや考えてきたことが綴られている。田舎暮らしのライフスタイルというより、むしろ1人の人間の生きてきた道・生き方が綴られているような印象を受けた。写真は田舎暮らしの日常を撮ったものであるが、その1枚1枚に、とりわけズームで撮った写真には小さな驚きと発見があり、撮影者の感性までもが伝わってきて何とも言えない魅力を秘めている。


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『木立のなかに引っ越しました』
娘と両親ではぐくむ那須高原での幸せ田舎暮らし

 東京を離れて那須高原に引っ越した著者の田舎暮らしエッセイである。デビュー5年目で女優として花開き、寸暇を惜しんで仕事に打ち込むも、無理がたたって重い自律神経失調症になった著者は、ドラマのロケで初冬の奥入瀬渓谷を訪れる。それが転機となって祖母と祖母の家があった長野での少女時代の生活体験の記憶がよみがえる。このことが、自らの仕事と生活に対する考え方を変え、自然の中で暮らしたいという思いを抱かせてくれることになった。

 雑木林の散歩、温泉めぐり、山菜採り、菜園づくり、ガーデニング、動物たちとのふれ合い、お祭りなど、新しい生活は自らにとって幸せな充実した日々であることが、軽妙で平易な文から伝わってくる。また、その暮らしの営みを通じて、地域の人たちとの新たな人間関係が構築されていく様子も楽しく描写されている。

 さらに、著者の生活とこの本が何よりもすばらしいのは、10年間の一人暮らしを経てすっかり自立した娘がその両親と新天地に移住し、一つ屋根の下で田舎暮らしの生活体験を共有することで、新鮮味のあるとても幸せな親子の絆を日々築き上げている様子がよく伝わってくる点である。

 結びには、「田舎暮らしをしたい方のために」として、土地探し、家づくり、田舎暮らしで挑戦した食品加工や料理のレシピなども紹介されている。

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『定年夫婦 田園ライフの愉しみ』
老父の住む秋田に家を建てた夫婦の田舎暮らし

 著者は、定年後の田舎暮らしを見据え、老父の住む郷里にセカンドハウスを建て、秋田と東京の間を妻と往来する生活を始めた。親の遺した広い農地で家庭菜園を始めたが、菜園づくりは、「婦唱夫随」のスタイルで切り盛りされている。

 本の内容からは、経験不足や悪天候などがもたらすさまざまな困難を、それぞれの努力と協力、地元の知人の助力などでどうにか乗り越えてきている様子がよく伝わってくる。田舎暮らしの実際は、やはり安全・安心の「のほほん」ライフのイメージとは異なることがよくわかる本である。

 また、この田舎暮らしは、郷里へのUターン型の例であり、周囲には親や本人と旧知の間柄である人も多く、いわゆるJターン・Iターンなどとは人間関係が少し異なっている点が特色である。さらに、Uターンの事例なだけに、田舎から都会に出て仕事と家族をもったサラリーマンならば誰しも直面するであろう、田舎の老親の介護や実家の屋敷・墓地・田畑などの管理や処分の問題などについても考えさせられた。


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『ぼくたちの古民家暮らし』
茅葺き古民家の維持管理や食品生産など、スローな体験が満載

 現在住まいにしている茨城県内の茅葺き古民家に出会い、1998年に家族で移住してからのスローな生活をつづった体験記。

 雨漏りのする茅葺き古民家との出会いからローンを組んで購入するまで、また引っ越し後の茅集めや茅葺き職人を頼んでの補修などの軌跡がくわしく示されている。茅葺き屋根に鋼鈑、壁に断熱材、窓にサッシを入れた再生古民家ではなく、古民家をそのまま住み継いでいくための努力を具体的に窺い知ることができる点で興味深かった。

 その他にも、鶏を絞めて食べる体験、バイオトイレの導入、ハーブの活用、蚊帳つり、薪ストーブの効果的活用、地域のイベントや伝統行事への参加、菜園づくりや山羊の飼育、竹林の開墾、水田を借用しての米作りなど、スローな生活の体験談がたくさん盛り込まれていて楽しめる。家族が新たな地で苦労を少しずつ楽しみに置き換えながら、充実した生活を送っている様子がよく伝わってきた。

 それにしても、このような生活を始めて継続していくには、やはりパートナーの理解と協力や積極性が何よりも心強いということが強く感じられた一冊である。


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『わたしの田舎暮らし』
陶芸教室などに没頭して暮らす女性一人住まいの田舎暮らし

 女性評論家で、赤城山中に移り住み、陶芸教室を開くとともに、美術館もつくった著者が綴ったエッセイである。著者は夫と別れ、育て上げた一男一女が独立し、精神的な支えだった父親とも死別して、第二の人生を田舎で送っている。しかし、その生活は決して時間が止まったかのような隠居生活ではなく、かなりアクティブである。

 また、単身生活の著者と交流があり、心が通っているのは、身内にほかに、遠方や近所の知人・友人であるが、常に最も身近にいるのは、猫や犬などのペット、住居の周りの動植物などだ。現代は都会と田舎を問わず、ペットのセカンドライフに占める位置づけは決して小さくないようだ。

 この本からは、「田舎暮らし」のあり方というよりも、単身になった女性の生き方、すなわちどのような「生きがい」を見出し、日々どのように生活していけばいいのかということについて考えさせられた。伴侶か自分のどちらかは最後に一人になるわけで、この本は、先々の単独セカンドライフを考えるよい手がかりになると思う。

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『やってみるか 40からの田舎暮らし』
北海道への移住者を中心に働き盛り・子育て世代が決行した田舎暮らしを紹介

 阪神大震災を機に、42歳で北海道弟子屈(てしかが)町に移り住んだ著者をはじめ、働き盛りの25人余りの移住体験から、田舎暮らしに踏み切るためのアドバイスを紹介している。紹介例の移住先は、長野・長崎・屋久島などの例もあるが、北海道移住が圧倒的に多い。

 定年移住者・早期退職移住者と違って、住宅ローンを抱え、住宅ローンを組めるだけの年収があり、子育て中のケースが多い年代の場合は、今の生活を捨てての移住には踏み切りにくい。しかし、それを乗り越え、あえて移住に踏み切った人のケースが多く収められている本なだけに、現役社会人の方には、ぜひ一読をおすすめしたい。

 移住には慎重にも慎重を要するが、この世代にとって最も重要な就業・起業について、「何とかなるものさ」という言葉は「何とかなった人」のセリフであるというアドバイスが印象的だった。それにつけても、田舎暮らし体験記の類の読者は、その内容のほとんどが結論においてはサクセス・ストーリーである点に、くれぐれも留意すべきである。

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『北にあり』
北海道移住の事例を移住者の個性的なライフスタイル・仕事を中心に紹介

 北海道新聞社の写真記者の経歴を持つ著者が、北海道への移住者をたくさんの写真と文で紹介している。その職業は、工芸家・画家・音楽家などの芸術家、新規就農者、個性あふれる飲食業や宿泊業とさまざまである。後半では、このような北海道への移住を支援するNPO法人「私設北海道開拓使の会」の活動などが紹介されている。

 特徴ある職業や個性的なライフスタイルのある人を集めて紹介しているせいか、紹介されている移住者の決断力と、それを裏付ける才能や発想などには感心させられた。 また、写真からは、それぞれの移住先の町や村のロケーションが、その移住者の生活や職業としっかり合致していることがよく伝わってきて、とても印象的であった。


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